異世界で国を作ってみた。プロローグ「何故こんなタイミングで」

 大陸最大の国家、アイゲンラウホ王国。王国中部に位置するダビツェ宮殿。
 この王国の王子であるロルフェ・アイゲンラウホは、パニック状態になっていた。
「何故こんなタイミングで……!」


 俺は十八歳で、政略結婚を間近に控えていた。
 雪解けが進んだ頃の朝早く、俺は悪夢で目が覚めた。そして、俺はこう叫んだ
「なんで……!何故こんなタイミングで思い出すんだ!」
 思い出した物。それは、自分の前世の記憶であった。

 俺は、前世に彼女がいた。
 働いていた建設会社の同僚だった。
 しかし、その恋は上司に無理矢理奪われた。その同僚に勝手に好意を抱いていた上司に刺されたのだ。
 心臓を、ナイフで一突きだった。

 やり場のない怒りに、俺は吠えるように叫んでいた。
「どうされました!?ロルフェ様!
 メイドが俺の元にやってくる。
「どうもこうもない!今は少し叫ばせてくれ!」
 俺はパニックになっていた。

 父親であり国王のコルト・アイゲンラウホは、俺が叫んでいた事を聞き驚いていた。
 この世界では物静かな性格であったからだろう。
「突然過ぎるな。一度医者に見せるか?」
 そう国王は側近に質問し、大急ぎで医者を呼んだ。

「はぁ……。結婚式まであと一週間だというのに、なんでこんなタイミングで思い出したんだ」
 やっと心を落ち着かせた頃、医者が俺の部屋にやってきた。
「失礼します、王国医師団団長のカイザー・シュレンドルフです。国王の命令でやって参りました」
「医師団長ですか。私の事を心配してくれたようですが、かなりリアルな内容の悪夢を見てしまいまして」
 俺はそう言って医師団長を帰らせようとしたが、そこに国王がやってきた。
「君には王位継承の権利が本当にあるのか調べさせてもらう」

 その日は、聞き取り調査が一日中行われた。
 しかし、夢で見た前世の事など誰も信じてはくれなかった。
 そして、翌日。
「ロルフェ・アイゲンラウホの王位継承権を剥奪した上で、内プタニア森林区へ送る。もちろん結婚も取り消しだ」

 最悪だ。精神的に王位継承の権利がないとみなされ継承権を剝奪。さらにはラヴァッサー魔国という敵対国との国境に送られる事になってしまった。
 もはや俺の人権などないのだろう。内プタニアへ送られる馬車に、俺と共に乗る者はいなかった。

 宮殿から馬車で十日。内プタニア森林区の中心部の小さな洋館に到着すると、俺と同じくらいの少女が出迎えていた。
「長旅お疲れ様です。私はケリー・レーヴェンガルト、この洋館を父親から引き継いで管理している者です。ケリーと呼んでください」
「私がロルフェ・アイゲンラウホ……、いや『ヨハネス・フェルパー』です」
 この名前は、俺が国境に送られる事になった時に内プタニアの管理を押し付けられた時に付けられた名前だ。内プタニアは相当寂れており、名目上の管理という事なのだろう。
「ヨハネス様。話は伝達魔法で届いております。しかし、不可解な点が複数あるので最初に聞いてもいいですか?」
「もちろん」

 ケリーは俺に拒否感を示さなかった。国王からは「洋館に軟禁しろ」という命令が下りているらしいが、酷い悪夢を見てパニックになっただけと説明するとこう言ってくれた。
「そうですか。悪夢を見てパニックになっただけでここに送るなんて、酷い国王ですね」
「まあ、国王は俺の事が嫌いだったんだろう。一応この内プタニア森林区の管理を任されたから、何か俺に仕事でも頼んでくれ」
「それでは、一つ無理を言ってもいいでしょうか?」
 ケリーは、俺に衝撃的な仕事を頼んできた。

「魔族と、仲良くしたいんです。」
 魔族と仲良くする。それは、この王国ではありえない事だ。しかし、それができればこの王国にとっても良い事だと思った。

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